京都徒然日記

京都の大学生。本と映画と星空と…

【読書感想】埜納タオ「夜明けの図書館」、または図書館レファレンスサービスについての講義

大学の司書課程の授業中に紹介されたこともあって、前々から気になっていた作品です。レファレンスサービスをメインで描いた司書の話というとなかなか面白さが描きにくいのではないかなあなどと思いつつAmazonで授業中にポチリ。

 

あらすじ

そこそこの人口規模(と思われる)の暁月市立図書館で念願の司書職員となった葵ひなこ。もちろん図書館の業務はある程度こなせるけれど、はじめてのレファレンスサービスに四苦八苦。情報源が全然ないのに80年前の郵便局舎の写真をさがしたり、くずし字字典を調べたり。そこまでひなこがレファレンスにこだわる理由はただ一つ。

本はいつだって”知る歓び”をおしえてくれる

想像する愉しみやそこから生まれる豊かな情感をも

人と本を繋げていきたい

広く、深く

そう思って私はこの場所にいるんだ

人と本を繋げるという使命を胸に、時には同僚の力を借りて今日もひなこはレファレンスの難問に挑む…!(こんな冒険的なお話ではないですが…)

 

この本は1つのレファレンスに対し1話というゆっくりペースなので、主人公の司書としての奮闘を見ながらレファレンスについて学んだり、同僚の職員さんを見守ったり、ほっこりしながら読めます。冒頭にでてくる「3年の就活浪人を経て〜」という文章が非常にリアルです。司書の正規職員はどこへいっても非常に高倍率なので……。

 

レファレンスサービスについて

ところでレファレンスサービスって皆さんご存知なのだろうか。私は有川浩図書館戦争」で図書館について学んだクチなので授業で聞く以前から知っていましたが、授業で見ていると勉強するまでは知らない人も多かったようです。

図書館戦争

図書館戦争

 

 実際にレファレンスサービスが出てくるのは、朝比奈さんの登場する「図書館内乱」(だったか?)と、主人公笠原郁の父が郁の図書館員としての力を量るためにレファレンスを頼むシーン。こちらは「図書館危機」だったと思います。うろ覚え。

 

レファレンスサービスとは。手近な教科書を引いてみました。

・レファレンスサービス

何らかの情報あるいは資料を求めている図書館利用者に対して、図書館職員が仲介的な立場から、求められている貞応あるいは資料を提供ないし提示すること、およびそれに関わる諸業務。

(小田光宏「情報サービス論」 JLA図書館情報学テキストシリーズⅢ 5)

つまりは、「○○な本が欲しい」とか「××の起源について知りたいんだけど」という利用者の声に応じて図書館員が本を探してくれるシステムです。利用者は少ないのですが、本来は図書館は知識のインフラとして存在するので、本の貸出以上にこのレファレンスサービスを使ってほしいなぁと思っているんですよね。

どこの図書館でもこのレファレンスサービスはやっていて、最近では国立国会図書館が「レファレンス協同データベース」を作っています。国会図書館だけではなく、全国の図書館のレファレンス事例を集めたもの。これがめちゃくちゃ面白い。

例えば、

「オー・ヘンリー(O.Henry)の『賢者の贈り物』に出てくる1ドル87セント(髪を売る前にデラが所持していた金額)は、日本では当時、及び現在に換算すると、どのくらいの価値になるのか」

「神戸の小学校では上履きを履かずに土足が多いと聞いたが、それはどうしてか」

(NDLレファレンス協同データベースより) 

 など多種多様です。回答を眺めていると、よくもまあこんなに見事に回答したもんだな!とレファレンスのプロ魂を感じます。レファ協はキーワード検索できるので、知りたいことがあったら活用するのも良いかもしれませんね。

crd.ndl.go.jp

 しかし、レファレンスサービスはなかなか不遇な存在で、図書館の予算&人員削減に伴い「そこまでやる必要ある?」という声も多いのが現状です。国会図書館などの大規模図書館は必要あるかもしれないけれど、地方の規模の小さい図書館は、司書をたくさん雇う力もないからです。

「夜明けの図書館」でも庶務担当・大野さんの台詞にあるように。

そもそもレファレンスってどうなの?予算しぼんでいく一方で、いくら行政とはいえサービス過剰だと思うけど。

それに今の次代、欲しい情報を得る手段はいくらでもあるだろ。はっきり言って時間と労力のムダ。

うーんなかなかきつい言葉ですね。もちろんインターネットで調べると正しい情報だけではないからとか、反論はできるのですが、情報を得る手段としてあまり使われないのは事実です。そもそもレファレンスサービスなんて知っている人の方が少なそうです。

最近では図書館もレフェラルサービス(分野の専門家・専門機関に紹介するサービス)や、カレントウェアネスサービス(利用者の申請に基づいて特定の主題についての研究動向・出版動向などをお知らせするサービス)など色々なサービスを展開しています。知識のインフラとして、または様々な知識インフラのハブとして図書館が機能するようになれば、より迅速・適切に情報を得ることができるのではないか?とは思いますが、現在の様子では、実現はまだまだ先といったところでしょうか。